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不登校と向き合い成長していった子どもたちの物語  5 野球部のレギュラー外されて不登校になったF君のプライド

F君が不登校になったのは、

夏の甲子園めざして高校野球の地方大会準決勝で敗れた後だった。

甲子園には一度も行ったことがない県立高校で、

新しく赴任してきた野球部監督の手腕により、

学校の歴史で初めて準決勝まで進出。

校長先生が全体集会で応援を呼びかけるなど、

盛り上がりを見せ、

レギュラーだったF君も、

始めて女の子に「キャー!」と言われる経験をした。

秋の大会をめざして「チーム再編」が行われ、

F君はレギュラーから外された。

外されたのはF君だけではなかったらしいが、

チーム内でゴタゴタし、

みんなの「嫌なところ」を見てしまったことに加え、

監督が担任だったため、

担任の顔を見るのが気まずい感じになってしまった。

 

本当に最初はそれだけだった。

 

真っ黒に日焼けして毎日部活に燃えていた生徒が不登校になるなんて、

周囲も思ってもみなかったので、

「ケガか?」「故障か?」なんて言われていたが、

チームメイトとのいざこざ、

担任兼監督とのちょっとしたボタンの掛け違いなどが重なり、

夏休みに入って部活以外に学校に行く理由がないということもあって、

すっかり学校から足が遠のいてしまったF君、

9月になっても心の傷がいえるどころか、

悪化してしまう。

 

不登校の子どもによくあることだが、

不登校になるきっかけは小さなことかもしれないが、

「学校に行かない」という状態が続くことにより、

友達関係がなくなったり、

あるいは、

家から一歩も出ないことから、

運動不足になり、気分がふさぎがちになったりして、

「不登校になったこと」自体が原因で、さらなる不登校につながってしまうことがある。

 

F君は典型的なそのパターンをたどった。

 

あんなに明るく元気だったのに、

ネガティブなことしか言わない子になってしまい、

ついにお母さんがわらにもすがる思いで相談にやってきた。

 

学校の先生と話したところによると、

出席日数とか単位とかを考えると、

あともうちょっとがんばれば、進級できるから、

お母さんとしては「せめてテストだけでも受けに行ってほしい」とのことだったが、

F君のプライドが許さない。

大学に行きたいというF君の意志を尊重し、

学校はとりあえず休学にして、

認定試験を受けて高卒資格を取り、

大学受験をめざそうということになった。

 

日中外を歩いて誰かに会うのが嫌だからということで、

暗くなってから親に車で送ってもらう方式で塾に通い始めた。

もともと部活に打ち込むタイプだから、

目標に向かって頑張ることは好きなので、

勉強はすいすい進んだ。

 

すんなり認定試験に通り、

大学受験できることに。

行けなかった甲子園のリベンジをめざし、

「東京六大学野球がやりたい」ということで、

早稲田を受験、

一般受験で早稲田はかなり難しいが、

無事突破し、

晴れて早稲田で野球部に入部した。

 

不登校というと、

「弱い」「おとなしい」「暗い」というイメージが強いが、

決してそういうタイプばかりが不登校になるわけではない。

F君のように、

頑張り屋さんで、一生懸命何かに打ち込む人が、

プライドを傷つけられて学校に行けなくなることもある。

 

でも大丈夫。

学校行かなくても受験できる制度が今はそろっているので、

そちらの道をとればよい。

学校はプライドを殺してまで行くところではない。

 

アート英語学苑

海住さつきでした。

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