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不登校と向き合い成長していった子どもたちの物語 7 母親にウソをつき続けて不登校になってしまったK君
K君がお母さんに連れられて初めて塾に来た時のことはよく覚えている。
お母さんが開口一番、
「うちの子は自宅以外でトイレに行けないんですよ」
と言ったからだ。
トイレに行けない?
どうやら、潔癖症?で、
学校のトイレで用を足すことができないのだという。
そのため、
学校を早退したり、休んだりしがちなんだとお母さんは言った。
「トイレのきれいな私立中にいれたのに」。
忙しそうなお母さんは、
「トイレが我慢できなくなったら連絡入れなさいと言ってあるので、
すぐ迎えに来ます」
と言ってバタバタと帰っていった。
一日目に、「自宅以外のトイレに行けない」ことはウソだということが判明した。
K君は、塾に来るとまずトイレ、
授業中もしょっちゅうトイレに行く。
たぶん、トイレは我慢できなくて行ってるわけではなく、
休憩に行っている。
集中力が切れると大人がトイレ行ったりお茶飲んだりするのと同じだ。
学校で本当にトイレに行くの我慢してる?
そんなことはない。
ちゃんと行っていた。
それはそうだろう。行かないと病気になっちゃうもんね。
じゃあ、なぜお母さんに、自宅以外のトイレに行けないなんて言ったの?
実は、K君のお母さんは、
息子が何かやらかすと(例えば、テストの点が目標を下回ったとか、順位が落ちたとか)
「明日の朝までにレポート書いて提出しなさい」
という人だった。
会社で上司に出す日報みたいなものだ。
現状と問題点、改善点などを箇条書きにして、お母さんが朝出勤するまでにテーブルの上に出しておく決まりらしい。
それをK君はしょっちゅう書かされていた。
お母さんはそれを読み、
現状分析や改善策に満足がいくとその件は終わりになるという。
でも、子どものやらかしなんて、
ほぼ同じことの連続で、
「明日からはがんばります」と言ってもできないから同じ過ちを犯してしまうわけで、
すぐに「現状分析」という名の言い訳は底をついてしまう。
そこで、K君は、何かの時に、
「自宅以外のトイレに行けない」という言い訳をでっちあげてしまったのだろう。
いつの間にかその言い訳が独り歩きし、
お母さんは「うちの子は潔癖症で自宅以外のトイレは使えないんです」ということを、
あちこちでしゃべるようになってしまったのだった。
K君にとって、
当面の間、一番大事なことは、
お母さんを怒らせないことだった。
怒ると相当怖かったんだろう。
だから、
お母さんにいかに上手にウソをつくかということを中心に、
日々の生活が回っていた。
その過程で、
学校とか、先生とか、友達とかを犯人?に仕立てあげることも必要になってくる。
そんなことを続けていたら、
自分のウソでがんじがらめになって、
本当にK君は学校に行けなくなってしまった。
ケアが必要なのは、
K君ではなく、お母さんの方だったのだが、
何しろ、お母さんは大人だから弁が立つし、
子どものことは誰よりもよく知っていると自負しているから、
誰のアドバイスも聞こうとしない。
「K君は塾でちゃんとトイレに行っていますよ」と言っても聞き入れず、
すぐに塾はやめてしまった。
K君がめでたく反抗期を迎え、
お母さんに立ち向かっていくことを祈るしかない。
・・・ということで、本日の結論:
お母さんのためにウソをつくことで子どもが追いつめられることもある。
アート英語学苑
海住さつきでした。
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